彫刻家と身体

更新日:6月24日



2015年、ロンドンのテートギャラリーで、バーバラ・ヘップワース展を観た。


それまで、彼女の作品は、それほど僕をワクワクさせるものではなかったが、この展覧会を観て、この彫刻家のイメージが一変した。


同じイギリスの彫刻家ヘンリー・ムーアと並ぶ、世界に名だたる巨匠である。


だから素晴らしいのは当たり前なのだろうけど、やっと、自分なりにもその意味が分かった。


単に、ごく一部の作品を、それも写真で見ていただけだった。


無認識の評価ほど怖いものはない。


ところで、この展覧会では、5分ほどのドキュメント映像が上映されていた。ヘップワースの制作風景などが収められている。


彼女が自分の背丈の2倍ほどもある大きな石に向かって、ダイレクトカービングを施している場面がある。


有色系の大理石だと思われるが、御影石ほど硬くはなくとも、やわらかい石ではない。それにノミ一本で、立ち向かっている。


カラーの映像が制作された年代を考えると、彼女の年齢は、50代にはなっているはずだ。


思わず、目を見張る。


果たして僕にできるだろうか。


何故、ヘップワースには、女性の身で、ここまでのことができるんだろうか?


結論的には、それはわからない。


何故なら、すべては個別のものだから。


確かなことは、僕が、彼女の仕事ぶりから、大きな刺激を受けているということ。



考えられることは、いろいろある。


例えば、彼女の彫刻脳が、彫刻家の体を作るということだ。


これは、彫刻家に限ったことではないだろう。野球選手が、野球をプレイできる体を作り上げていくのと同じだ。


ヘップワースのような優れた彫刻家は、自分のビジョンがはっきりしていて、無理なく、身体と連携しているのではないか。


心技体、という言葉を思い出す。


問題は、思考の状態ということだ。


彼女の仕事をする姿から、彼女の思考状態を、垣間見ることもできるように思う。


だから、刺激を受けるということにもなるのだろう。



僕の実家は、土建屋をやっていた。石積をする現場がいくつもあって、僕もよく手伝ったものだ。


会社には、熟練の石積みの職人さんがいた。


中には、80歳を過ぎた職人さんもいたが、削岩機で石を割り、5キロ以上もある破槌(石を割るハンマー)で形を整えていた。削岩機を手に持って、片足を大きな石にかける姿は美しかった。


うちの職人さんは、野菜を作ってもとても上手だった。ある事に突出した人は、他の分野でも、力を発揮できるのだろうか。


あのバーバラ・ヘップワースだって、どこかの草野球に出場したとしたら、ホームランでも打ちそうな気がするのである。


2021/6/22





大地の意思 2002 御影石

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