昔の石職人との対話

更新日:10月14日



今日は仕事で天草に行くのにマーサさんの車を使いました。


小さい車だから船の運賃が安いのがその理由です。



出発の前にトランクを開けてみると塔婆が3本載せてありました。



「そうだ、今年の父の盆の供養の時に、寺に返すために墓から引き揚げてきたものだ。すっかり忘れていた。」


「まだ時間があるから、船に乗る前に返しに行こう。」



車に乗ってしばらく走ると、自分の車と比べて乗りなれない感じに、少し後悔の念がもたげてきました。



「遠出をするのに、ちょっとのことでケチ臭かったかな。」



青雲時で塔婆を返して表に出ると、門前の参道には、石の仏像が約20体ほど整然と並んでいます。


これは私が子供の時から見慣れた光景です。



私は自然と引き寄せられるように、仏像たちの前に歩いて行きました。



「素晴らしい彫刻だな。」



思わず感嘆の声をあげます。


まるで初めて見る彫刻のように新鮮な驚きを覚えました。



「以前こんなに近くで見たのはいつだったかな。」


「いや、こんな風に観たのは全く初めてのことだ。」



島原は昔から石の文化が盛んだったと伝えられています。墓石や石垣そしてこのような仏像に至るまで、職人が腕を振るっていたのでしょう。


雲仙という火山を戴く島原では、やわらかくて彫りやすい安山岩が豊富にとれたました。のちに同じ安山岩でも、もう少し目の細かい小長井の石も使うようになったと聞いています。



「この仏像は小長井の石のようだな。」



目は細かいけれども、素朴な風合いを残した石肌を見ながらそう思いました。



作風は豊かなフォルムにしておおらかなたたずまい。


同じ郷土出身の彫刻家北村西望にも通じるものを感じます。



残された作品というものは、何より当時の職人たちの息使いを伝えてくれます。しばし

その昔に戻って、彼らとともに仕事をしている錯覚に襲われました。



「俺は職人の一人だったのか?」



そんな思いにとらわれたりしました。



「ああ、俺はこのためにマーサさんの車に乗ったのかな? ふふふ」



何かしら不思議な体験でした。



2022 10/12





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