立体の授業



「はーい、今日は立体の授業をやるよー。」


「じゃあ、まずは画用紙に自由に線を書いてみて。ただし、条件があります。線は交差してはいけません。そして線を描きだしたポイントと、線が終わるポイントが一致することです。意味わかるかな?」


「オッケーですね。じゃあやってみて。おー、雲みたいな形になったね。自由に描けと言うと、雲を思い出す人は多いかもね。だって、雲は自由に形を変えていくものだからね。」



「さあ、これは絵だから平面だ。さて、これを立体にするにはどうしたらいいかな?ちょっと考えてみよう。」


「わからないかな?よし、じゃあこうやって線に沿って画用紙を鋏で切ってみると、、、」


「ほら、これで立体ができたよ。」


「何だ、キツネにつままれたような顔をしてるね。」


「そうそう、理屈はわかるよね。」



「じゃあ、これに楊枝をつけてみよう。ほら、雲が空間に立ち上がったぞ。」


「ゆっくりと回してみよう。よーく見てみて、ここはちょっと注意が必要なところだ。画用紙の輪郭線がゆっくりと形を変えていくのがわかるかな? デッサンをしている人はこういうのが見えるはずだよ。デッサンというのは見る意思が必要だろう?どうだい、雲がゆっくり形を変えていくように見えるじゃないか。」



「そうだね。ちょっとすごいよね。」



「今度はこの画用紙を折り曲げて、屏風みたいな格好にしてみよう。」


「はい、雲に陽の光が差しました。」


「ね、そんな風に見えるよね。」



「実は人間は、普段はこれくらいに整理して物事を知覚しているかもしれないよ。」


「実はこの辺の話になってくると、ちょっと難しいけど、視覚的な比喩表現ということも視野に入ってくるんだけどね。」



「もう少しやってみよう。また同じように雲の形を切り抜いて、それを半分に切ったりして、それらをテープを使って垂直方向に組み立ててみよう。」


「より複雑な形になった。これはどう見ても立体でしょ。じゃあね。さっきの比喩の話のところをちょっとやってみようか。」



「今作った立体物に色を付けるとしたら、君はどんな色を付ける?」


「ピンク色? それはどうしてなのかな?」


「あー、綿菓子かー。そうだね。雲が綿菓子になった訳だ。空に浮かぶ綿菓子。そう、そう、それがあなたの連想したもの。他の人なら違うことを考えたかもしれないということだよ。」


「雲は自由、綿菓子は甘い。そこに自分の中でどんな関係があるのか意識の上ではちょっとつながらないかもしれない。だから言葉にはならないかもしれないけれども、そこにはやっぱり何かありそう、と何となく思わせるのが比喩の力なんです。」



「では今度は、僕の方から提案します。この立体物を真っ赤に塗ったら、何を連想しますか?」


「おお、地獄の雲ね。地獄の紅蓮の炎に染まった雲というわけだね。」



「雲ということを離れたらどうかな。」



「よし、実際に赤い絵の具で塗ってみようか。」


「出来たね。」


「おお、今度は金魚に見えるか。よろしい。イメージの飛躍が起こったぞ。」



「楊枝をつけてまた回してみようか。」


「綺麗だねー。ああ、君もそう思う?本当に複雑な形が千変万化するようだね。」



「これ大きくしたら面白そう? そうだ、そうなんだよ。3メートルくらいにしたらどうかな。」


「絶対いい? 駅前とかにありそう? そうだよね。君はある事に気づいたんだよ。それはスケールが持つ意味があるということ。大きさというのは大切な要素なのです。当然だよね。見る人がどう感じるかということが大事なんだからね。」



「実は素材によってもその立体物、つまり彫刻と言っていいな、それが持つ意味合いが変わってくるのです。」


「いつの間にかこんな時間になってしまったな。続きはまたね。今日の授業はこれでおしまい。」


2022/1/30



魚 大理石 2009

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